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出原教授らのグループがアトピー性皮膚炎の痒みの原因を解明するとともに、その阻害剤を発見

2023年03月29日

これは令和5年1月10日に佐賀大学において記者会見した内容です。

アトピー性皮膚炎とは、増悪と軽快を繰り返す痒みを伴う湿疹を主病変とする疾患だと定義されています。患者の多くは「アトピー素因」、つまりアレルギー体質を持っていることが知られています。このように、痒みはアトピー性皮膚炎における大きな特徴となっています。

アトピー性皮膚炎は、子供や若者に多い病気です。20歳以下の子供や若者におけるアトピー性皮膚炎の有症率は約10%、つまり10人に一人がアトピー性皮膚炎を持っていると報告されています。成人では年齢とともにその有症率は低下しますが、50代、60代でも2.5%の方がアトピー性皮膚炎を持っておられます。

痒みは不快な感覚であり、昼間集中力を低下させたり、夜間では不眠を引き起こすなど日常生活の支障となります。それに加えて、痒みにより皮膚を引っ掻くことにより、皮膚のバリアーが障害され、そこからアレルゲンが侵入して、さらに炎症が悪化する原因となります。このため、痒みの改善は、アトピー性皮膚炎をコントロールするためにも重要です。

アトピー性皮膚炎の治療では、現在でもステロイド外用薬が基本となっています。アトピー性皮膚炎が重症だとそれに加えて他の薬剤も使用されます。特にこの数年特定の分子を標的とする新薬が開発され、アトピー性皮膚炎の治療は大きく変化してきています。さらに今後研究が進んで、アトピー性皮膚炎に対する治療薬が新たに登場することが期待されています。

今回の研究成果のまとめをお伝えします。アトピー性皮膚炎の皮膚組織では、線維芽細胞からペリオスチンというタンパク質が作られます。このペリオスチンが痒みを感じる知覚神経に直接作用し、痒みの刺激が大脳に伝わります。大脳ではそれを痒みとして認識し、痒い部位を引っ掻くという行動を起こします。

CP4715という化合物はインテグリンと結合する性質を持っています。これを投与すると神経上のインテグリンと結合して、ペリオスチンがインテグリンと結合できなくなります。そうすると、アトピー性皮膚炎の皮膚組織においてペリオスチンが作られていても、ペリオスチンによる痒み刺激を感じなくなり、その結果、引っ掻き行動も止まります。つまり、CP4715はアトピー性皮膚炎における痒みに対する治療薬となる可能性を持っています。

私達の研究室では、約10年前にペリオスチンがアトピー性皮膚炎の発症に重要であることをすでに明らかにしています。アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚組織や血中でペリオスチンが高くなること、ペリオスチンを生まれつき産生しないマウスでは皮膚炎が起こりにくいこと、ペリオチンは表皮細胞に作用して炎症を起こすことなどから、それを示しています。しかし、当時の研究では、ペリオスチンと痒みの関係は不明でした。

痒みについての解析が可能になったのは、富山大学の北島先生らが作られたFADSマウスのおかげです。このマウスは遺伝子を操作して作られています。顔にのみ皮膚炎症が起こることと、生まれつき非常に激しい痒みによる引っ掻き行動を示すことを特徴としています。

FADSマウスは、アトピー性皮膚炎患者によく似た皮膚組織所見、遺伝子発現プロフィールを示すことからも、アトピー性皮膚炎のモデルマウスになると考えています。また、ペリオスチンが皮膚組織に高発現していること、血中で増加していることも、アトピー皮膚炎の患者さんと類似しています。

生まれつきペリオスチンを産生しないマウスを作りました。そうすると、痒みによる引っ掻き行動が著明に減少しました。神経の刺激を示す自発発火も同様に著明に減少していることが分かります。このことから、FADSマウスの痒みにおいて、ペリオスチンが重要であることが分かりました。

次にペリオスチンの働きを抑制するためにCP4715をFADSマウスに投与してみました。毎日2週間投与した後と、注射した直後とで解析を行いました。どちらの方法でも痒みによる引っ掻き行動が減少しました。特にCP4715を注射した後1時間以内に、神経の自発発火と引っ掻き行動の両方が減少しました。このことから、CP4715は直接神経に作用してペリオスチンによる痒みを抑えていると考えられました。

詳細については出原教授らの研究室のサイトをご覧ください

関連動画

  1. FADSマウス(動画)
  2. 生まれつきペリオスチンを産生できないFADSマウス(動画)
  3. CP4715投与したFADSマウス(動画)

会見の模様

記者会見に対する反応

メデイアから多くの反響をいただきました。ここに把握している項目を記します。

新聞

  • 日本経済新聞 2023/1/11 夕刊  
    アトピーのかゆみ原因解明 佐賀大・富山大など治療薬開発めざす
  • 東京読売新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピー症状抑える化合物 佐賀大が発見、新薬開発へ
  • 西部読売新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピーかゆみ 改善化合物 佐賀大発見 新薬開発へ
  • 産経新聞 2023/1/11  大阪夕刊
    アトピーのかゆみ解明 佐賀大など、治療薬開発へ
  • 北海道新聞2023/1/11 夕刊全道
    アトピーかゆみ原因究明*佐賀大など*治療薬開発目指す
  • 神奈川新聞 2023/1/11
    アトピー性皮膚炎で佐賀大/かゆみの原因を究明
  • 北日本新聞2023/1/11 朝刊
    アトピー かゆみ原因解明 富山大と佐賀大のグループ 治療薬の開発進める
  • 北國新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピーかゆみ原因を解明 抑制効果確認、薬開発へ 富大など研究グループ
  • 富山新聞 2023/1/11
    アトピーかゆみ原因を解明 抑制効果を確認、薬開発へ 富大・北島理事ら研究 タンパク質「ペリオスチン」が知覚神経刺激
  • 信濃毎日新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピー、かゆみの原因判明 佐賀大など
  • 神戸新聞 2023/1/11  夕刊
    アトピーのかゆみ 原因究明 佐賀大など 抑制の仕組みも確認
  • 山陽新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピーかゆみ原因究明 佐賀大など 抑制効果も 治療薬開発目指す
  • 中国新聞 2023/1/11  朝刊  
    アトピーかゆみ タンパク質一因 佐賀大など 治療薬の開発目指す
  • 徳島新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピー かゆみ原因究明 佐賀大などマウス実験 薬物で抑制も確認
  • 愛媛新聞 2023/1/11
    アトピーのかゆみ タンパク質起因 佐賀大など発表
  • 西日本新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピーのかゆみ タンパク質が刺激 佐賀大など原因究明
  • 佐賀新聞 2023/1/11
    アトピーかゆみ原因解明 佐賀大など 皮膚炎の新薬開発へ
  • 長崎新聞 2023/1/11
    アトピー かゆみ原因究明/佐賀大などの研究チーム/タンパク質抑制で効果
  • 熊本日日新聞 2023/1/11  朝刊
    アトピー性皮膚炎のかゆみ「物質解明」 佐賀大など
  • 日本証券新聞 2023/1/12
    アトピー患者に朗報-メディシノバがツレ高
  • 朝日新聞 2023/1/15
    アトピー 仕組み一つ解明 佐賀大 かゆみ抑える新薬開発へ

テレビ

  • かちかちPress(STS サガテレビ) 2023/1/10, 2023/1/16, 2023/1/25
  • ニュースただいま佐賀(NHK 佐賀放送局) 2023/1/10
  • シリタカ!(KBC 九州朝日放送) 2023/1/10, 2023/2/9
  • 地元応援live Wish+(KBC 九州朝日放送) 2023/2/9
  • KBCニュース(KBC 九州朝日放送)  2023/2/9
  • 記者のチカラ (TNC テレビ西日本) 2023/1/11
  • アサデス(KBC 九州朝日放送) 2023/1/11
  • Live news イット!(フジテレビジョン) 2023/1/11
  • タダイマ!(RKB 毎日放送) 2023 年 1/12
  • THE TIME(TBS) 2023/1/12
  • まるっと!サタデー(TBS) 2023/1/14
  • シューイチ (日本テレビ) 2023/2/19
  • 世界一受けたい授業 (日本テレビ) 2023/3/25

ラジオ

  • Morning Jam(FM FUKUOKA) 2023/1/11
  • チャージ(NBC長崎放送) 2023/1/18